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  • 執筆者の写真小林大賀 Taiga Kobayashi

翼を持つ人 Man who has wing

この「イメージの博物誌」というシリーズも好物で、しょっちゅう図書館でお世話になっている。このシリーズには死者の書、アトランティス伝説、シャーマンなどなどがあり、どれをとっても面白い。

今回は「天使」からの引用。


天使信仰を大いに正当化するような記述は、新約聖書にはほとんど見当たらない。「天使崇拝」のうねりは、教会の底辺から、農民から、その声が<神の声>に他ならない民衆から押し寄せた。不幸なことに、神学者や法学者や道徳家は、通俗的または神秘主義的な想像力に応じることができなかった。

しかしながら、美術家は、いずれの要求も満たした。天使に関する限り、キリスト教美術は神学に比べはるかに豊かで幅広い。ユダヤ教美術の欠落も、新約聖書の乏しく曖昧な記述も、キリスト教美術家の創造活動をなんら妨げることはなかった。


この中世、古典時代に関する記述は、現代へと当てはめて考えることができるように思う。常々思うのは一部の(大半の?)現代美術の「文脈を知らぬ者には理解の術がない」というのは、大昔の神学、スコラ学の状況に似ているのではないかということ。彼らはコンセプチュアルの名の下にイメージの共有の力を却下する。一方でイメージの力を積極的に使う美術は(抽象画や彫刻を除いて)、イラスト、映画、アニメ、漫画、絵本…といった形で存在していて、つねに物語と連携している。そういう意味ではナウシカのようなキャラクターも20世紀の天使像と言えるかもしれない。


天使、翼をもつ人のイメージは西洋からやってきたものだと一般的には思われているが、むしろ東洋起源であるという説もあるくらいで、世界中に点在している。


私が住んでいる北海道の余市には壁画をもつフゴッペ洞窟があり、そこにも翼をもった人が描かれている。あまり知られていないが、フゴッペ洞窟はラスコーやアルタミラに並ぶような壁画遺産であるという。外国人と話したりすると「北海道は開拓150年で」「本当に歴史の浅い土地です」とつらつらと述べてしまうが、人間という種が引き継いできたイメージ、世界に同様のイメージが点在する事実などなどを考えると、何でもかんでも物理的な「歴史観」に収めるのはどうかと思われる。






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